潮風に導かれ……

徒然なるままに旅の日記を書こうと思う

Juice WRLDとドラッグ

 私は洋楽のHIPHOPをそこそこ聴くが、その中でも一番好きなラッパーがJuice WRLDである。Juiceの曲の中にはドラッグが大量に出てくる。実際、エモ・ラップを牽引している多くのラッパーがドラッグに手を出しているのが現状だ。メンヘラとドラッグも関わりが深い。抗うつ薬抗不安薬を飲んでメンタルを保ち、時にはODもするからである。今回はJuiceの曲を通してこのドラッグ問題について考えたい。

 

目次

 

基礎知識

 薬物には大きく分けて3種類ある。

・アッパー

 覚醒作用を齎すもの。

・ダウナー

 鎮静作用を齎すもの。

サイケデリック(サイケ)

 幻覚作用を齎すもの。

 これらを踏まえた上で以下の解説を読んでほしい。

 

主な薬物

大麻マリファナ

 weed、野菜、420など色々な隠語がある。最も代表的な薬物。日本では違法だが、合法な国や地域も多く、普遍的に蔓延していると思われる。ダウナー系のドラッグである。アメリカのラッパーは当たり前のように使用している。

 

覚醒剤

 シャブ、アイス、スピードなどとも呼ばれる。物質名としてはアンフェタミンメタンフェタミンに該当する。アッパー系のドラッグである。これもまたラップ中によく登場する。

 

コカイン

 コーク、チャリなどとも呼ばれる。アッパー系のドラッグの中ではかなり強い。本来はラッパーは売人として売る側であったが、近年は乱用者も増えているという。ハードドラッグの一種。コカの実から取れる。

 

ヘロイン

 恐らく最強の薬物。他の薬物は、それを使用しながら作業をしたりセックスをしたりするために使用されるが、ヘロインはそれ自体の快楽に溺れるものだという。オピオイド系でダウナー系のドラッグである。ハードドラッグの一種。ケシの実から取れる。

 

MDMA

 エクスタシー、モリーなどとも呼ばれる。アッパー系のドラッグである。様々に着色されたものが密売されている。

 

LSD

 紙などとも呼ばれる。サイケ系のドラッグである。幻覚や幻聴が起こるタイプのドラッグである。私はあまり興味を惹かれない。

 

リーン

 purple drank、dirty spriteなどとも呼ばれる。昨今ラッパーの間で流行っているもの。後述するブロンと同じコデイン入りの咳止めシロップをスプライトなどで割ったものである。アッパー系かつダウナー系である。合法であるゆえに蔓延しやすい。

 

ザナック

 Xannyとも呼ばれる。抗不安薬の一種で、物質名としてはアルプラゾラム、日本での商品名はソラナックス。完全に合法な薬だが、それゆえに蔓延しやすい。鬱病などの患者には普通に気軽に処方されると思われる。

 

パーコセット

 Perkyなどとも呼ばれる。オキシコドンアセトアミノフェンが混ざった処方箋ドラッグ。モルヒネなどと同じく鎮痛剤として処方されるもの。オピオイド系でダウナー系のドラッグである。

 

 

日本でODによく使われる薬物

ブロン

 何を置いてもブロンが一番悪名高い。ブロンに含まれるコデインが体内でモルヒネに変換され、快楽を齎す。同時にエフェドリンによる覚醒作用も起こる。本来の用途は咳止めである。アッパー系かつダウナー系のドラッグである。通常の薬局では購入数制限などが行われている。

 

パブロンゴールド

 俗に金パブと呼ばれる。ブロンと同じくコデインの含まれる薬品だが、アセトアミノフェンが邪魔で肝機能障害を起こす可能性があるので、CWEという濾過作業をすることが推奨されている。そもそもOD自体推奨されないものだが。

 

レスタミン

 俗にレタスと呼ばれる。本来の用途はアレルギー性皮膚炎の治療薬。眠剤ドリエルと中身は同じなのに安いので眠剤としても使用できる。ODすると眠気の他、虫などの幻覚を見るとされている。

 

コンタック

 本来の用途は風邪薬。ODするとふわふわして幻覚を見たり音楽がクリアに聞こえたりするとされている。サイケ系のドラッグである。

 

デパス

 市販薬を除けば最もODされていると思われるもの。抗不安薬で、物質名はエチゾラム鬱病などの場合、簡単に貰うことができるので、蔓延しやすい。私も処方されているが、今のところODはしていない。

 

 

Juice WRLDの楽曲

Lucid Dreams/Juice WRLD

 

 

 Juiceの代表曲。直接薬物名は登場しないが

“I take prescriptions to make me feel a-okay”

 というフレーズから薬物に走っていることがわかる。

”Now I’m just better off dead”

 私も自分は死んだ方がましなんじゃないかとよく考える。親や世間に迷惑をかけるだけかけて何もせず生きているなんて……。そして

“You made my heart break

 You made my heart ache”

 と繰り返されるところは痛切である。彼女に傷つけられた恨みが描かれている。恋愛は毒にも薬にもなるが、ここでは毒となる好例である。

 

 

Righteous/Juice WRLD

 

 

“Five or six pills in my right hand yeah

 Codeine runneth over on my nightstand”

 というフレーズからコデインに走っていることがわかる。前述の通り、コデインは海外のラッパーにも日本のメンヘラにも広く愛されている。

“Taking medicine to fix all of the damage

 My anxiety the size of a planet oh”

 そう、惑星のように大きな不安を薬物だけが解消してくれるのである。私も抗うつ薬抗不安薬で何とか繋ぎ止めている命だ。このフレーズは痛切に響く。

“Over ice I’m freezing”

 という歌詞から覚醒剤もやっているのではないかと推測できる。違法薬物はやってはいけないが、それに逃げたくなるほどの不安はわかってあげてほしいものである。

 

 

Lean Wit Me/Juice WRLD

 

 

“Lean with me, pop with me”

“Smoke with me, drink with me”

 というフレーズが特徴的だ。リーンに逃げ、煙草(あるいはマリファナ)や酒に溺れている。私はリーンはやめたが煙草や酒はやめられずにいる。

“Yeah, I love P’s, yeah I love lean”

 という歌詞からパーコセットやリーンを愛しており脱せない苦しみが伝わってくる。これらは処方箋ドラッグと市販薬だから合法で手に入る。ゆえに依存から脱せない苦しみは痛切だ。鬱の不安はどうすれば取り除けるのだろう?

 

 

Black & White/Juice WRLD

 

 

“I’m in the black Benz, uh

 Doin’ cocaine with my black friends, uh”

“Switch up to the white Benz, uh (Benz)

 Doin’ codeine with my white friends, uh (friends)”

 と対比されている。黒人の友達とコカインをやり、白人の友達とコデインをやっているのだ。コカインもラッパーの間に広まっているのだろう。そこまで強い薬に頼らないといけないほど苦しんでいるのだ。

“I know that these percys finna hurt me, ayy”

 パーコセットが自分を傷つけることもわかっていながら、逃れられない。

“Pills with the Hennessy, I might throw up”

 ヘネシー(ブランデー)で薬を飲んだりもしている。もうめちゃくちゃだ。

“I’m getting too fucked up”

 と歌われている通り。

 

 

Wishing Well/Juice WRLD

 

 

“Stress on my shoulders like a anvil

 Perky got me itching like a ant-hill

 Drugs killing me softly Lauryn Hill

 と歌われている通りやはりパーコセットに依存している。Wishing Wellとは願い井戸のことで、一曲を通して苦しみから抜け出したいことが歌われているが、やはり薬物依存からは抜け出せていない。それほどに鬱のストレスは重く、薬物をやらないとやってられないものなのだ。

“If it wasn’t for the pills I wouldn’t be here

 But if I keep taking these pills I won’t be here yeah”

 と、もう薬なしではやっていけなくなっている。

 

 

Wasted/Juice WRLD, Lil Uzi Vert

 

 

“Wasted, I’m on these drugs, I fell wasted”

 と歌われている通り、薬をやってハイになっている。

“Wasted, I waste all my time when I’m wasted”

 薬をやっていると時間を無駄にすることになると知りながら。ここにも薬物依存の悲しい現実が表れている。また

“She do cocaine in my basement

 I’m her docter, but I’m runnin’ out of patience”

 という彼女との不健全な関係性も描写されている。彼女もJuice自身もハイになっており、救いようがない。

 

 

End Of The Road/Juice WRLD

 

 

“It’s suicidal she wrote

 This is the end of the show, it’s over

 We doin’ drugs ‘til we in a coma”

 というふうに彼女は自殺し、Juiceたちは昏睡するまでドラッグに溺れる。まさに道の終わり、恋路の終わりであろう。メンヘラ同士の恋愛がうまくいかないことを象徴しているかのようだ。そして

“I pray to God my plug I pour up

 I pray to God my plug still show up”

とドラッグが手に入れられることを祈る。

“She love the coke, but not Coca-Cola”

 彼女もコカインに溺れている。メンヘラに恋は難しい。薬物に溺れて、お互いに限界なのだろう。

 息が詰まりそうだ。これだけ薬物依存の歌詞と向き合っていると、胸が詰まりそう。最後に少し救いのある曲を紹介しよう。

 

 

Girl Of My Dreams/Juice WRLD, SUGA of BTS

 

 

 この曲では

“Stop sippin’ purple potion (For you, babe)”

 と彼女にリーンを啜るのをやめるよう諭している。そして

“The girl of my dreams, but I ain’t fallin’ asleep”

“I ain’t gon’ lie, you got it all, all, all, all, all of me”

 と熱愛が歌われている。君は俺のすべてを手に入れたのだと。ああ、ようやく恋が叶った。不健全な関係を脱して、本当の愛を手に入れたのだ。やはり薬物に依存してはいけない。恋が薬の代わりになるのだ。

 

 

 以上、Juiceの歌詞とともに薬物依存について考えてきた。薬物依存の当事者の視点を通して、薬物依存への理解を深め、薬物から脱せるようになればいいと切に願う。私も酒や煙草、抗うつ薬抗不安薬から脱せてないが、ブロンなどからは足を洗えた。読者諸氏も、身近に薬物依存者がいれば、薬物依存を頭ごなしに否定するのではなく、その苦しみに寄り添いながら一緒に脱する方法を考えてあげてくれれば幸いである。

 

 

番外編

Lemonade/Internet Money, Gunna, Don Toliver, NAV

 
 
 この曲には実に多様な薬物が登場する。
“Xanny bars suicide door brand new bag”
“Off the juice codeine got me tripping”
“Ice lemonade my neck was drippin’”
“Adderall feeling nausea xanax bars ayy”
“Did a percocet promethazine”
 というように。ザナックス、コデイン、アイス、パーコセットは前述の通りで、lemonadeはヒドロコドン、Adderallはアンフェタミンを含むADHD治療薬、promethazineは抗ヒスタミン剤である。健全な読者なら知らないであろう薬物名のオンパレードに驚かされる。
 

Blueberry Faygo/Lil Mosey

 
 
 爽やかなナンバーだが、Blueberry Faygoもリーンのことを指している。
“Poured up a 4 now that’s blueberry Faygo”
 と歌われている。Faygoは清涼飲料水を指していて、それと咳止めシロップを混ぜたものを飲んでいるようだ。
“Got me some gas rollin’ up some”
 とマリファナも吸っていることがわかる。更に
“I ain’t fucked her yesterday I’ma fuck some”
 とセックスについても触れている。
 

Mask Off/Future

 
 
 Futureはリーンをスタイリッシュに広めた張本人の一人で、JuiceもFutureの影響でリーンを始めたと言われている。というわけで最後に紹介しておこう。
“Percocets molly Percocets”
 というフレーズはあまりに有名である。パーコセットとMDMAを常用していることがわかる。また
“Two cups toast up with the gang”
 とリーンも飲んでいることがわかる(リーンの冷たさを保つためにカップを二つ重ねるらしい)。しかし
“Mask on fuck it mask off”
 というように、薬物から脱しようとする試みが描かれている。薬物でキマった自分のマスクを剥いで、素面でいられる日が来ればいいと願うばかりである。それが健全な生き方なのだから。