潮騒、某、暮れ泥み

小説のような旅行記を。鉄道旅を主として全国を旅しています。

鳥取・岡山・香川旅行

 新快速に乗って姫路で降りると、姫新線播但線ホームのある改札へ向かう。姫新線播但線ホームと山陽本線ホームの間にも改札があるのだ。18きっぷを見せて通過すると、1泊2日の短い旅が始まる。私は播但線寺前行に乗り込んだ。

 寺前で乗り継いで和田山へ、更に山陰本線城崎温泉、そこから乗り継いでようやく鳥取行に乗れる。広い兵庫県を通過し切って鳥取県内に入ると鳥取駅はもうすぐだ。そうして鳥取駅に到着した。

 

 

 鳥取で降りてみると、後述する砂の美術館の割引券が売っているのが目に付いた。行く予定なので先に割引券を買っておく。少し得をしたことを嬉しく思いながら砂丘会館行のバスに乗って鳥取砂丘に向かった。

 砂丘会館から鳥取砂丘は目の前だ。階段を上って砂丘の入口に踏み込むと、さらさらした砂に足を取られる感触がある。これは靴に砂が入るなあと少し疎ましく思ったが、そんなことも忘れるくらいの絶景が目に飛び込んできた。砂丘で一番盛り上がっている部分である馬の背と、その先の日本海。オアシスには植物が茂っている。それは今まで見たこともないほど巨大な「砂場」だった。

 

 

 馬の背を目指して砂丘の中を歩いていく。途中までは下り坂で、馬の背は急勾配の上り坂だ。汗を流しながら馬の背を必死で上っていくと、頂上に着く。そこから見る景色もまた絶景だった。来た道を振り返っても、向こう側の日本海を見ても、飽きることがない。しばらくその景観を眺めて、馬の背を下り、砂丘会館の方まで戻っていった。靴には大量の砂が入り込み、息は上がった。

 

 

 ビジターセンター横で足を洗う。砂を大体落とし切ったところでビジターセンターの展示室へ。砂丘の構造や歴史、各地の砂の展示などがあった。砂丘はかつて日本に多くあったが、失われつつあるということをそこで初めて知った。

 次は砂の美術館へ向かうべく歩き出す。美術館もそう遠くないところにあるので大したことではない。美術館に到着すると、先程の割引券を提示して中に入った。

 砂の美術館は1、2年程度の周期で展示替えをし、砂の彫像を作っては壊しを繰り返しているらしい。海外から一流のアーティストがやってきて制作をしているようだ。各国の名所などを再現しているようで、今期はエジプト編。エジプトには砂のイメージが強いのでちょうどいい時に来たと思った。

 展示物には圧倒された。ルクソール神殿に始まり、様々なエジプトの風景が歴史の順に沿って並んでいる。細部まで細かく彫られており、それも砂と水だけで作るというのだから凄い。終始驚かされながら展示を見て回った。

 

 

 

 

 

 

 美術館を出ると、近くで名産の梨ソフトを食べてバスを待つ。やってきたのはポケモンのサンドとコラボしたバス。運がいい。サンドのかわいさに癒されながらバスに乗り込んだ。

 鳥取駅に戻ってくると、お土産を買って、喫煙所で一服。因美線智頭行を待った。この日は岡山で泊まる予定だった。まだ夕方だが、津山線岡山行の終電に間に合わせるにはこの時間帯に因美線に乗る必要があった。

 因美線で智頭まで乗り、またしばらく待ちぼうけ。その後、1日1本しか設定されていない因美線快速津山行が来た。乗客はほとんどいない。暗い夜の中を列車が進み、津山に着いた。津山でもまただいぶ待たされて、ようやく岡山行の列車が来た。岡山に着いた頃には23時を回っていた。疲れていたので駅前のネカフェに泊まる。明日の朝も早い。シャワーを浴びて、さっさと寝ることにした。

 

 2日目の朝、走って岡山駅に向かい、始発の吉備線総社行に乗る。まずは吉備津で降りた。備中国一宮・吉備津神社までの松並木沿いを歩いていく。

 

 

 吉備津神社は広く、国宝の本殿及び拝殿は吉備津造りと呼ばれる特徴的な建築様式だ。他にも様々な小規模の摂社があった。時間があまりないので慌てて参拝していく。汗がひたすら流れていく。一遍に服に汗染みが広がる。

 

 

 続いて一駅折り返し備前一宮で降りる。ここには備前国一宮・吉備津彦神社がある。両方とも岡山市内なので、岡山市内に備前国備中国の境界があることになる。吉備津神社吉備津彦神社も桃太郎伝説との関連が深い神社である。吉備津彦神社の方が規模は小さく、参拝後に少し息をつく暇ができた。

 

 

 更に折り返し、吉備線を総社まで乗り切ると、そのまま岡山駅へと戻っていく。これは単に端から端まで乗りたかっただけだ。岡山に着くとマリンライナーに乗り、香川を目指す。今回の目的地は観音寺だ。

 観音寺はアニメ『結城友奈は勇者である』(以下、『ゆゆゆ』と呼ぶ)の聖地だ。今回はその聖地巡礼に行く。マリンライナーを坂出で降りると、乗換待ちがまた発生した。駅前にある坂出のイオンも聖地らしいので写真を撮っておく。駅の周りをぶらぶらと散歩して、サンポート南風リレー号観音寺行に乗り込んだ。

 

 

 まず、観音寺駅が聖地だ。聖地巡礼というものは駅舎一つでも感動するものである。次はこれまた聖地のうどん屋である「つるや」に向かう。肉ぶっかけをいただいた。香川のうどんはやはり絶品である。「うどんは女子力を上げるのよ!」

 

 

 

 

 

 

 うどんを食べ終わると、琴弾公園へと歩き始める。徒歩30分程度あり少々長い道程をのんびりと行く。三架橋を渡ると琴弾八幡宮の鳥居が見えた。ところで、ここからが地獄である。

 

 

 381段あるらしい石段を一段ずつ上っていく。また汗がひどく流れ出す。汗拭きタオルは湿って使い物にならなくなっていく。それでも上って上って上っていると、ようやく琴弾八幡宮の拝殿に着いた。

 

 

 

 

 参拝した後は少し休憩し、観音寺のシンボルである銭形砂絵寛永通宝)を見に少し歩く。森に囲まれている銭形砂絵は立派で、その向こうには瀬戸内海が見える。この砂絵は定期的にボランティアで整備をしているという。また、砂絵の展望台には、『ゆゆゆ』の主人公・結城友奈の声による観光案内もあった。しっかりとアニメの聖地として認められ、愛されていることがわかり嬉しくなった。

 

 

 本当はお遍路の四国八十八ヶ所のうちの2つである神恵院と観音寺にも行ってみたかったが、ここで時間も体力も尽きた。またいずれ訪れることを誓い、石段を下って観音寺駅を目指す。下りはだいぶ楽だ。そして観音寺駅でお土産を買うと、再びサンポート南風リレー号の高松行に乗り込んだ。

 旅の最後に、倉敷で桃のパフェが食べたかった。倉敷美観地区には3回目の来訪となる。私は倉敷が好きなのだ。そしてラストオーダーに間に合うように急ぎ足でパフェを食べに行った。

 岡山県産の桃を使ったパフェは絶品だった。パフェにも色々あるが、これには桃が詰まっている。その甘さを旅の終わりのご褒美のようなものとし、倉敷を去った。

 

 

 走って乗り込んだ山陽本線は姫路行。岡山より西から姫路まで乗り継ぎなしで行けるのは珍しいのでありがたく思った。ゆっくり椅子に座ると、冷房が汗を乾かしていく。そして眠りに就いた。

 姫路で降りると、帰ってきた感が湧いてくる。新快速にはすぐに乗り継げた。親の顔より見たというほどに見た225系が大阪へ向かって走り出す。徐々に都会じみていく車窓に、田舎旅の思い出を抱いて。