潮騒、某、暮れ泥み

小説のような旅行記を。鉄道旅を主として全国を旅しています。

茨城・福島・山形旅行

 上野は東京の北の玄関口と言われるが、東京から見れば北関東・東北への玄関口でもあると思う。ここから水戸・宇都宮・高崎へと路線が伸びているからだ。厳密には常磐線の起点は日暮里、宇都宮線東北本線で起点は東京、高崎線の起点は大宮であるが、運転系統上はやはり上野中心であると思う。今回も上野が出発点だ。

 上野から常磐線に乗って水戸へ行った。水戸は宇都宮・高崎には劣るものの大きな駅だ。ここから水郡線に乗る。水郡線は水戸と郡山を結ぶ山間の路線で、2021年春に台風による損傷を修復し全線再開した。そして水郡線に乗って、上菅谷で乗り換え、まずは常陸太田駅に行った。太田支線の乗り潰しである。

 

 

 折り返して上菅谷から袋田に向かう予定だったが、水郡線が遅延して袋田駅から袋田の滝に行くバスに間に合わなくなってしまった。これは悔しかったが、仕方ない。結局、袋田で降りることはなく、そのまま水郡線で郡山まで行った。茨城観光がなしになってしまった。悔しいので、タイトルにはさも茨城も観光したかのように書いておく。

 さて、郡山から磐越東線に乗っていわきを目指す。水戸から常磐線で行けばいいものを、とんだ遠回りをしたものである。まずは小野新町行に乗って、そこで1時間くらい待ってようやくいわき行が来た。いわきに着いた頃には完全に夜だった。一日移動だけで終わってしまった。いわきのネカフェに泊まって、2日目以降の旅の成功を祈った。

 

 

 

 2日目はいわき駅から常磐線に乗って、泉駅で降りた。泉駅は小名浜地区の最寄駅であり、土日祝に限ってイオンモールいわき小名浜へ行く無料のシャトルバスが走っている。その無料シャトルバスに乗り、小名浜を目指す。シャトルバスは高速バスのような造りだった。

 

 

 イオンモールの前で降ろされると、アクアマリンふくしまに向かって歩いた。アクアマリンふくしまは大きな水族館で、多種多様な魚に加えて陸上の動物も展示されており、釣りが体験できるエリアや子供が遊べる遊具のあるエリアまであり、複合的な施設だった。

 

 

 チケットを買って順路に沿っていくと、最初は水族館ではなくわくわく里山・縄文の里に通され、ネズミやタヌキや昆虫などの展示と、滝などの写真展が開かれていた。

 

 

 その後、水族館本館に入り、最初は生命の進化を辿るエリアがあった。それからエレベーターで上に行き、福島の川と潮目の海のエリアに着いた。潮目の海というのはアクアマリンふくしまのテーマで、黒潮親潮が流れ込む潮目をイメージしたものらしい。ここでは世界でここでしか見られないというバショウカジキも展示されていた。

 

 

 

 

 その次は北の海の海獣・海鳥のエリアで、トドやアザラシ、エトピリカウミガラスへの給餌が行われていた。特にトドの給餌は迫力があった。ウミガラスはペンギンとよく間違えられるとのことだった。

 

 

 

 次はクジラの骨や捕鯨の歴史を展示するエリアがあり、化石の展示やプラスチックごみに関する展示もあった。

 

 

 その先には熱帯アジアの展示があり、熱帯雨林を模した空間の中に魚だけでなく爬虫類の展示もあった。世界で初めてヤエヤマノコギリハゼの繁殖に成功したらしい。

 

 

 その奥にはサンゴ礁の海が再現されており、カラフルな熱帯魚やチンアナゴなどが泳いでいた。やはり熱帯魚の鮮やかさには目を瞠るものがあった。

 

 

 

 段々下へと下りていって、潮目の海の下側に来た。そこには寿司屋があり、水族館の魚を見ながら寿司を食べられるようだった。これは面白い企画だと思った。潮目の海の下には三角柱の通り道があり、優雅に泳ぐ様々な魚を下からも横からも見ることができた。

 

 

 

 その奥には親潮アイスボックスというエリアがあり、北方のクジラやヤドカリやエビなどが展示されていた。知床から取ってきたものが多く、希少な種類も多いらしかった。

 

 

 アクアマリンふくしまには初繁殖認定された魚も多いらしく、たくさんの表彰を受けていた。

 

 

 ここまで来てようやく本館の常設展示は終わり、食堂やショップのある場所に着いた。その外には釣り場や遊具などがあり、展望台もあった。展望台で屋上に上がると、小名浜港一帯や太平洋、マリンタワーを臨むことができた。

 

 

 

 蛇の目ビーチという子供が水辺で遊べるエリアをぐるっと回ると入口に戻ってきた。そこには絵本すいぞくかんなる展示があり、「スイミー」に因んだクラゲや小魚がいた。それを見終わると、ようやく本館のすべての展示を見終えたことになる。思ったより長く充実した展示で、楽しむことができた。

 

 

 外に出ると、更に金魚館があって、流石に疲れてきていたが様々な模様や形態の金魚を観察した。その外では鯉の餌やりもできるようだった。

 

 

 アクアマリンふくしまを出ると、小名浜港の遊歩道沿いを歩いた。釣りをしている人が多くいた。ここで一休憩して、海を眺めていた。

 

 

 その後はお土産が売られているといういわき・ら・ら・ミュウに行って少しお土産を眺めた。この頃には乗りたい帰りのバスの時間が近づいていた。いそいそとバス停に戻り、シャトルバスで泉駅まで戻って、しばらくして来た常磐線いわき駅まで戻った。

 

 

 いわき駅前のラトブでお土産を物色した後、磐越東線に乗って郡山へ。そこから更に東北本線で福島に行った。福島に着くと、福島交通飯坂線の改札へ向かった。飯坂温泉に行くのだ。

 

 

 JRの1番線ホームから続く改札口へ向かって、いい電1日フリーきっぷを買った。ホームは福島交通阿武隈急行の共同ホームとなっていて、反対側に先に阿武隈急行の車両が来た。それを見送ると、次は飯坂線の車両が入線してきた。ちょうど夜の帰宅の時間で利用者は双方ともそこそこいた。私は飯坂線の車両に乗り込んだ。因みに、飯坂線にも泉駅があった。

 

 

 飯坂温泉駅に着くと、駅近の温泉を目指して歩く。飯坂温泉は熱いのが売りらしいが、あまり熱い温泉は得意ではないので、温めの温泉があるところを選んだ。いい電1日フリーきっぷには飯坂温泉共同浴場9ヶ所のどれか一つに入れるチケットが付いている。それを使って入浴した。因みに、切符を使い終わった後は栞として使うよう書かれてあり、なかなか粋な企画だと思った。

 

 

 浴槽は2つあり、熱い方は源泉で45℃、温い方は加水で42℃であった。この45℃でも熱すぎるのに、飯坂では熱い方ではないというのが驚きである。私は温い方に浸かってのぼせないように注意した。後で脱衣所の貼り紙を見ると、60℃超えの温泉まであるようで、それは最早死人が出るレベルなのではないかと思った。

 

 

 温泉を出ると、周囲を少し散策する。紅葉が始まりつつあった。あまり時間がなかったので旧堀切邸とかには行けなかった。再訪したい温泉街である。

 

 

 飯坂線で折り返して福島駅に戻ると、そこから奥羽本線山形線)米沢行に乗り込んだ。次の日は朝早くから米沢で活動するので、前日入りだ。米沢に着いたら、ネカフェまでの長い道を歩き続けた。途中でふと空を見上げると、いつもより星が多く、輝いて見えた。

 

 

 

 3日目は5時台から動き出して、上杉神社に向けて歩き続けた。かなり長い距離を歩いて、上杉神社の表参道に辿り着く。上杉神社は米沢城跡に建つ、上杉謙信を祭神とする神社だ。その手前には摂社の松岬神社もある。また、元は城なので堀もある。大鳥居の前で礼をして境内に入ると、立派な社殿が顔を出す。とりあえず参拝。復路で小さな池を発見した。これも庭園なのだろうか。

 

 

 

 

 ここから米沢駅に戻るのだが、時間がギリギリだった。駅は思ったより遠く、かなり歩かなければならない。早足で歩いていると、汗をかいてきた。何とか間に合って、奥羽本線山形行に乗った。

 山形駅でしばしの待ち時間があったので、お土産でも見ようかと思ったが、朝早すぎてエスパルは開いてなかった。改札前にも土産物コーナーはあるので、そこを少し冷やかした。

 次は新庄行に乗って、大石田駅で降りた。尾花沢市銀山温泉への玄関口だ。ここからはながさバス銀山線に乗り、銀山温泉を目指す。バスは運賃前払い制、高速バスのような4列シートで、満席になるくらい人が乗っていた。

 

 

 30分強くらいで銀山温泉に到着。バス停から畝った坂道を少し下って、大正浪漫溢れる銀山川沿いの温泉街が顔を出した。

 

 

 まずは温泉街を散策して、奥にある白銀の滝まで行った。滝は勢いよく流れ落ちており、迫力があった。その後は銀山川沿いに設置されている足湯に浸かった。また、古山閣には鏝絵なるものが飾られており、季節ごとの風情ある風景が描かれていた。

 

 

 

 その後はいよいよ入浴。隈研吾が建築したという共同浴場に足を運んだ。中は狭く、定員は3名でこぢんまりとしていたが、硫黄臭のする温泉は適度に熱くて心地よかった。

 

 

 温泉から上がると、雨が降り始めていた。近くの土産物屋で雨宿りがてらお土産を物色し、ここで買うことに決めた。お土産を買い終えても雨が止む様子はないので、傘を差してバス停まで戻った。

 バス停には簡易な待合室があり、そこに座って煙草を吹かしていると、少しずつ人が集まってきた。結局、1時間くらい待って、ようやく来た大石田駅行のバスに乗り込めた。

 大石田でまた待ち時間があって、山形行の列車がやってきた。それに乗り山形に着くと、また長い待ち時間。適当にエスパルを冷やかして、米沢行の列車に乗った。

 来た道を完全に戻っているが、これには時間的な都合があってこうなっている。移動距離が無駄に伸びて非効率だが仕方ない。流石に米沢まで戻ることはなく、次は赤湯で降りた。南陽市の中心駅である。

 

 

 赤湯はラーメンと温泉が有名だ。まずは赤湯ラーメンを食べに行った。日が暮れてきた頃に店に着くと、数組の客が待っていた。幸いすぐに店内には入れ、ベンチソファーに座って待った。先に注文を取られ、しばらくして席に通される。

 注文した赤湯からみそラーメンがテーブルに置かれた。ラーメンの上に乗っている辛味噌の塊が印象的で、これをスープに溶かしながら食べていく。油も多めのスープは程よい辛さで美味しかった。中太の縮れ麺も私好みであった。

 

 

 ラーメンを食べ終わると、次は温泉へ。何だか温泉ばかり入っている気がするが、たまたまである。温泉街に着くと、観光案内所に足湯が設置されており、それに隣接する形で共同浴場があった。

 

 

 共同浴場では2つの湯が楽しめた。浴場には仄かな硫黄臭が漂い、雰囲気がいい。一方の湯は熱くて私は一瞬しか入れなかったが、もう一方の湯はさほど熱くなくゆっくり浸かることができた。極楽である。

 

 

 温泉を出ると、真っ直ぐ赤湯駅に戻った。駅の待合室にはワインなどの特産品が並べられていた。やがてやってきた山形行に乗り、また来た道を折り返した。

 山形駅に着くと、仙山線仙台行がもう既に待機していた。出発までまだかなり時間があったが、とりあえず乗り込んでおく。旅の思い出を振り返りながら待っていると、発射時刻が来て、仙台へ向けて走り出した。

 仙台駅に着くと、東口から出て夜行バスの乗り場に向かった。そう、この旅は3日に収まり切っていないのである。最後は夜行バスに乗って東京に帰ることになっていたし、その分の運賃もかかっているので、実質的には3泊4日のようなものである。

 しばし待っていると、乗る予定の夜行バスがやってきて、それに乗り込んだ。疲れていたからか、夜行バスでもぐっすり眠ることができた。目覚めたら、新宿に着いていた。バスから降りて、新宿駅の方へと歩いていった。