前回の記事はこちら。
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宿毛の宿を出て高知県最後の延光寺を訪れた後、高知県を西に出て愛媛県愛南町に入った。3県目となる愛媛は「菩提の道場」であるらしい。愛媛南部は高知西部と同じように広さに対して札所の数が少ないので、一つ一つ進むのに時間がかかる。そうして長い道を走っていると、かなりの強風が吹き始め、国道56号を通って海側の市街地へ出るとそれはますます強まった気がした。
愛媛県最初の寺となる観自在寺に着くと、お参りと納経を済ませた後、一旦休憩しながら天気を調べた。すると愛媛県南予エリアには暴風警報と波浪警報が発令されており、それを裏付けるかのように境内の木々が傾きながらざわざわと音を立てていた。手水用の柄杓も風に流され、おまけに空模様も怪しくなり、さっきまで晴れていた空が不穏な雲に覆われ始めていた。
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これはまずいと思い、この日のお遍路を継続するのは危険なので中止しようかとも思ったが、それにしてもまだ朝なので、時間を潰すのには長すぎる。本当に危なかったらいつでも中断していいと思いながら、引き続き国道を走って宇和島の方へと向かうことにした。
風はますます強まり、度々ハンドルを取られそうになるし、その上小雨が降り始め、ますます天気は荒れる一方であった。海沿いの道では高波が岸に打ち付けて、砕けた波の飛沫が塀を越えて道路側まで飛んでくることもあるくらいだった。とはいえそんな何もないところで止まっても避難できる場所も宿泊できる場所もないので、少なくとも宇和島の市街地まではと思って必死でアクセルをかけ続けた。そんな状況でも法定速度を超えてまで原付を追い越していく車は何台もあって、怖いもの知らずかと慄いた。原付などより遥かに重量があるのでハンドルを取られることもさほどなかったのかもしれなかったが……。
宇和島の中心市街を通り抜け、50kmほどの道を走り抜けてやっと次の第四十一番にあたる龍光寺に辿り着いた。ここまで死線を潜り抜けてこられたのも、偏に私が自分の命を軽んじているからであった。雨は止んで少しはましな天気になったが、暴風は吹き続けていた。
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次の仏木寺までが宇和島市内にあって、その次は西予市に入る。宇和島には現存天守の宇和島城や、名物料理の鯛めしなど魅力的なものが多くあるが、それらは以前訪れた時に行ったので、今回は名残惜しくもお遍路に集中して西予市の明石寺に着いた。この時点で時刻は既に14時台であり、しかも次の第四十四番へは80km近くもあるという。これは流石に間に合わなそうな気がして、無理に次へ行くことはせず、明石寺駐車場の側にあるお土産や巡礼用品などを売っている店を物色でもしながら休憩することにした。ここにこのような店があるのも、きっと次の寺までが遠すぎるからに違いなかった。
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春は近づけど風も強くまだ寒い日なので、温かい甘酒どうですかと表で宣伝していた。気まぐれにそれを一ついただくことにすると、店の奥の食堂スペースの一角に座って待った。やがて出してくれた甘酒をゆっくり啜ったら身体が温まって寒さが和らいだ。飲みながらごそごそと荷物の整理をして態勢を整えると、代金を払って礼を述べて駐車場に戻った。
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団体バスのいなくなった駐車場にぽつんと佇んでいた原付の方へ向かって、もうこの日は次の寺まで間に合わないので一旦松山の方まで行こうと、また長い経路を調べていると、雨の代わりに霰が降り始めた。山間部の標高の高いところとはいえ、春になろうとしている四国で霰が降るのは流石に面食らった。幸いすぐに降り止んだので、 その隙に出発して、松山を目指して原付で走り続けた。
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数時間してようやく松山のネカフェに辿り着いた。普段の電車旅なら大街道のアーケードの方にでも行っただろうが、今回は駐輪スペースが必要なので、東温市との境界にある郊外店に来た。国道沿いで周辺にはロードサイド型のチェーン店やショッピングモールが立地しているばかりの場所だったので、特に愛媛の名物とかではないが快活クラブの隣に入居している焼肉屋に入った。とにかく一日中暴風の中を駆け抜けてきたので、もうどこかへ行くという元気がなかった。
ファミリー層の多い焼肉屋に一人入って、ホルモンが好きな私はホルモンの盛り合わせを頼んでひたすらホルモンだけを焼いて食べた。最後に冷麺を食べて店を出ると、ネカフェの自分のブースに戻ってさっさと寝ることにした。次の日もまた過酷な山道を行くところから始まるので。
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翌日もぱっとしない空模様であったが、何よりも寒かった。朝6時頃に出発しようと外に出ると、松山の平地でさえ氷点下で、原付に降りた霜が一部凍っていたほどであった。これから目指す大寳寺と岩屋寺は、松山から南へ、峠を越えた先の久万高原町にある。標高が上がるのでここからまだ寒いところに行くことを覚悟して、懐炉を貼って熱気を蓄えておいた。
段々山の方へ走っていくと少しずつ交通量は少なくなり、完全に山の中に入ると、しんと静まり返った道の脇には薄く雪が積もっており、更に粉雪も降り始めて、景色は完全に冬であった。
やがて峠を越えて久万高原町の市街地に入ると、大寳寺はもうすぐである。幹線道路から少し外れて寺に到着する頃には7時をかなり過ぎており、一番乗りというわけにはいかなかったようだ。それでも境内には他にお遍路さんがいる感じでもなく、一人粛々と参拝を済ませた。
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次の岩屋寺はそこから更にまた山道に入ったところにあり、駐車場までの道はわかりやすいが、そこから徒歩の長い坂と階段が待っている八十八ヶ所有数の難所である。駐車場に原付を停めて、境内へと坂道を上っていくと、巡礼道具や接待の飲み物などがあるらしい小さな門前街の一角には、「まだ/\これからじゃ岩屋の坂と人生は」と書かれた看板があった。門前の店舗はまだ朝早いからか大方閉まっているようであった。
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長い岩屋の雪山の階段をずっと上っていくと、やがて山門が見えたが、そこから更にかなり進んだところまで行ってようやく本堂などがある頂上部に着いた。やっと辿り着いた一番上の少し迫り出した展望スペースからは、木々や建物の屋根に雪が積もっているのが見え、また丁度そのタイミングで少し日光が差したにも拘らず粉雪も降っていて、疲れた目にはその景色が幻想的にすら見えた。
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参拝を終えて納経所に行くと、納経してもらったついでにお接待としてクッキーの入った袋を貰った。番号的にもここがおよそ真ん中にあたるので、折り返しを祝う意図もあるのかと思ってそれをありがたく受け取って鞄に入れると、納経所を去った。納経を終えると、さもこの日のお遍路が終わったかのような気持ちになって、しばらく小屋の隅で煙草を吸いながら、鎖樋を伝い落ちる雪解け水を眺めていた。少なくともこの日一番の難所は越えたので、まだ9時台だったが既に半分以上は目標まで辿り着いたと言っても過言ではなかった。気温がようやく正の値になったのを感じながら長い坂と階段を折り返して駐車場まで戻り、岩屋寺を後にした。
そこからは松山の市街地に近いところに密集しているので楽だった。松山市内に戻ると、市内東部にある浄瑠璃寺、八坂寺、西林寺、浄土寺、繁多寺、石手寺の6つを淡々と回った。
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残りの太山寺と円明寺は市内北部にあってやや離れており、経路的にも松山の中心市街地を突っ切る形となるので、ど真ん中の大街道まで乗り入れて少し休憩がてら久々の都会的な街並みを散歩することにした。
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時刻は昼過ぎ、松山名物の鍋焼きうどんでも食べられたらいいなと思い大街道や銀天街のアーケード周辺を散策するも、その辺りにある有名店は既に売り切れでその日の営業を終了しており、結局何も食べることはできなかった。日ごとに売り切れ次第終了としているような人気店は大抵昼過ぎにはもう閉まっているものである。少し残念に思いながらふらっと三越に入ってみると、イルミネーションの綺麗で都会的な高級感のある店内に落ち着きを覚えたが、奥の方のフードコートは閑散としており、そこでも何か食べようというほどの気分にはなれなかった。
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そうこうしているうちに時間が経っていて、松山市内にある残る2つの寺に行けるかどうかという時間になってきたので、市内をずっと北上して、太山寺と円明寺を訪れた。ここまでが松山市内で、次の数ヶ所は少し離れて今治市内に集中しているので、丁度いい切れ目となった。ここでこの日のお遍路を終え、また同じネカフェに宿泊するべく帰路に就いた。
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ところで随分海寄りに来ていたので、途中で何か海鮮でも食べようと検索してみた。離島への航路も多い港町の三津の辺りには多くあるようだったが、その辺りは電車で行けるし、その先の離島を旅する際に訪れることがありそうなので、今後あまり訪れることがなさそうな松山空港の近くまで行ったところの海鮮丼屋と海鮮市場を訪れた。
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愛媛県は海での魚類の養殖量が日本一で、様々な魚介を楽しめる場所であるが、その店ではWブリ丼を食べることにした。生の刺身と藁焼きの2種類の鰤が載った丼である。鰤の身はどちらも肉厚で、特に藁焼きの方は香ばしく旨みが詰まっていて美味しかった。醤油と山葵だけではなく生卵を溶かしてかける宇和島の鯛めしみたいなスタイルの海鮮丼であったが、卵と鰤の相性もまたよかった。鍋焼きうどんの代わりにまた独特の美味しい海鮮丼を食べることができたので、食欲も満たされた。
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その後は隣の市場に行って、色んな海鮮や愛媛県産の肉類、野菜などが売られているのを見た。その中にはやはり加熱などの調理が必要なものが多いので、旅の道中に買っても食べる手段がないものが多かったが、おつまみ的なもので生食できるものがあったら少し買っていきたいと思い、帆立のチャンジャとスモークタンを購入して帰ることにした。
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市場で何を買うか結構悩んでいたので、外に出るといつの間にか日が暮れそうになっていた。次第に暗くなっていく夜の松山をひたすら東へ走って出発地に戻っていく。この東西移動には同じ市内でも結構距離があったので、何だかんだで時間がかかった。
戻ってくると、隣の大きなショッピングモールのスーパーでお酒を買って、先程のおつまみと共にネカフェで一人の晩酌をした。おつまみとして買ってきたチャンジャとスモークタンはどちらも美味しく、特にスモークタンは西予の山奥の牧場で飼育された県産の豚肉で、香辛料の香ばしい風味が堪らないものであった。こうして愛媛2日目の夜は過ぎていった。
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次の日は7時頃に出発して、今治市の延命寺を目指した。東温市側からは山の中を突っ切っていくルートが最短だったが、途中から道に自信が持てないまま何となく走っていると、山の中にしては人の多い市街地に戻ってきていて、地図を見ると前日と同じ松山市の海側まで来てしまっていた。こうなっては仕方がないので、ずっと海沿いに松山と今治の間の交通量の多い国道を通って、かなりのタイムロスを抱えながら延命寺に着いた。
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そこからしばらくは今治市内の寺を巡っていくことになる。次は南光坊という、名前に「寺」の付かない珍しい寺を訪れた。今治市の中心市街地にも程近く、発展した街並みの中にあった。単独でこのような立地にあるこんな名前の寺は非常に珍しいので、寺として特に目立ったものがあるわけでもないがやはり印象深い。
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その次は立て続けに泰山寺、永福寺、仙遊寺、国分寺と今治市内の残りの寺をすべて回った。この時点で時刻はまだ12時台であり、ここから更にいくらか行けそうな感じがする時間帯であったが、次に行く寺こそが個人的に原付遍路の最大の難所となった場所であった。
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その最大の難所は、西条市に入って最初の横峰寺という寺である。その寺はその標高から考えても非常に険しく、徒歩や自転車の場合は言うまでもなく最難所の一つであろうが、原付にとってもまた最難所と言える場所であった。というのは、車道で境内まで行こうとすると有料林道を経由することになり、50ccの原付ではその道路を通ることすらできないからであった。
原付かつ無料で行ける道路としては、境内より500mくらい標高が低いところの休憩所までで、そこに駐車場が用意されてはいるものの、車でそこまで来た人は、間違えたと思って悉く引き返していった。そんな場所に原付を停めて初めて、こんな低いところまでしか道がないことを気付いた私は、そこから長く続く徒歩の登山道を見上げて愕然としていた。
![f:id:imtabi:20240623200605p:image f:id:imtabi:20240623200605p:image](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/imtabi/20240623/20240623200605.png)
すると、その近くに停まっていた車からお爺さんが出てきた。
「これからここ登るんか。ここから上まではしんどいで」
どうやらこの辺りに住んでいるのか、このお爺さんはいつもこの辺りにいるらしく、私に話しかけてきたのも、ここから山道を登っていく人に対して接待をするためということだった。
四国には、お遍路さんにはお接待をするという文化が根付いており、他の寺でもそのようなお接待として果物や菓子などを提供している場所はいくつかあった。しかし、このような形で個人的に接待をしていただくのは初めての経験であった。徒歩遍路ならまだしも、原付含むバイクや車のような乗り物に乗っていると、徒歩や車の住民からお接待の品物を貰うということはまずないので、個人間でのお接待はこれが最初で最後のことであった。
その老人が抱えていた箱の蓋を開けると、何かの花を象ったようなバッジと飴玉の入った袋がいくつかあった。私はこういう局面で迷ってしまうタイプなので、どれか一つ貰おうと内心かなり焦りながら一つ受け取った。そのお礼としてしきたり通りに納め札を渡すと、老人は満足げに私を励まして自分の車へと戻っていった。ここからの道はあまりにも過酷だが、彼のおかげで少し元気づけられて、私は登山を開始した。
登山道は2km強程度のものであるらしいが、その看板には恨みの籠った体感距離が落書きされていたりして、何とも治安が悪いというか、ここを通った巡礼者たちの嘆きの温度を感じた。登山道の序盤は川のせせらぎの聞こえるまだ緩やかな道であったが、やがて川の上流よりも上の過酷な山道へと変わり、何度も途中で休憩を挟みながら、1時間以上かけて何とか登り切った。
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山門を潜って境内に入っていくと、ようやく人々の声が聞こえてきて、車で来た巡礼者と合流するような形となった。駐車場は山門とは反対側にあるらしく、参拝を終えてからそちらを見に行く人たちとすれ違いながら、やっと本堂に辿り着いた私は、息を整えて合掌した。
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納経を終えると、山門の近くの小屋で少し休んだ。想像以上に過酷な登山道であったので、次の寺まで行く時間も体力も最早残っていなそうだったし、もう下山した後にまた同じネカフェへと帰る経路を検索した。ほとんど東温市側にあるそこまで帰るには、西条市からだと西に一直線に山を越えて比較的すぐに辿り着ける経路であった。これがまさにこの場所に宿泊することにしていたメリットであった。
そうしてまた出発地へと戻ってくると、近くの回転寿司屋に行くことにした。愛媛最後の夜になるだろうとは思ったが、疲れ切っていたのであまり動く気力もなかった。回転寿司は地元のファミリー層で賑わい、既に何組も待ちが発生していたので、名前を書いて結構長い時間待ってようやく席に案内された。
回転寿司といっても全国チェーンとかではなく瀬戸内にいくつか出店しているローカルチェーンである。瀬戸内の愛媛や香川の魚介類の寿司がおすすめに多くあがっていたので、それらを中心に寿司を食べていった。疲れていたからか、普段と違ってお酒を飲むこともなく、次から次へと素早く寿司を取っては食べていき、私にしては珍しいハイペースになっていた。
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美味しい寿司を少食なりに結構食べて満足すると、会計をして店を出た。こんなふうに一人で来ている客など他に見当たらなかったが、愛媛や高知の他に、これから向かう香川の魚介類も食べられたので、悪くない店であった。ネカフェに戻ると少しだけお酒を飲みながら横峰寺で貰った飾りを見てみた。名前はわからなかったが、花びらが螺髪のようになっていて、これで私もあの老人も一つ功徳を積めていたらいいなあと思った。
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同じネカフェに3連泊もして世話になったが、次の日はいよいよ愛媛を抜けて最後の1県、「涅槃の道場」である香川に向かう。
この日から数日雨が続くらしく、暗雲立ち込める中、山道を東に抜けて西条市に戻ってきた。最初に訪れた香園寺は変わった寺で、本堂が近代的な建築の講堂になっていて、1階部分を参った後に2階部分へ上がると、灯りを抑えめにした広い室内には立派な本尊が安置されており、それに向かって数百席くらいの座席が備え付けられていた。中ではツアー客が住職の話を聞いていて、それを邪魔しないように本尊を拝んでから外に出た。
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続く宝寿寺、吉祥寺、前神寺は同じ西条市内にあって寄り集まっているので、さらっと巡って、いよいよ愛媛県最後の寺である三角寺を目指して国道11号を東へと走り続けた。
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愛媛県で一番東にある四国中央市にある三角寺に着いてお参りすると、愛媛県内はコンプリートである。これでついに3県が埋まって、残りは香川だけとなった。香川はそもそもの県域が狭いので、全体的に寺が密集しており巡りやすそうで、後は楽かと思われたが、天気が芳しくないので一抹の不安を残した。とはいえもうお遍路も終盤、最後の地となる香川でも頑張ろうと気合を入れ直して、香川県に入った。
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