潮騒、某、暮れ泥み

小説のような旅行記を。鉄道旅を主として全国を旅しています。

西伊豆・沼津淡島旅行

 今年の1月のこと、静岡県沼津市にある水族館「あわしまマリンパーク」が閉館するという情報が突如発表された。同地を含む内浦地区は、アニメ『ラブライブ!サンシャイン‼︎』(以下、作中キャラクターのユニットであるAqoursと呼ぶ)の舞台となった地であり、沼津市とは大々的にコラボして沼津のよさをアピールして盛り上げている。その水族館の閉館の情報を知り、前々から行きたかった西伊豆(一部中伊豆)の観光の一部に組み込むことにして出かけることにした。なお、東伊豆については過去の記事を参照されたい。

 新宿から始発の小田急急行小田原行に乗って、まずは早朝の小田原に踏み入れた。そこからは普通の紙のきっぷで三島まで東海道本線に乗った。鉄道旅をよくする人々には周知の事実だが、JR同士で別会社の管轄エリアを跨ぐ場合はICカードが使えないので注意されたい。

 三島に着くと、東海バスフリーきっぷの3日券と、伊豆箱根鉄道駿豆線の1日乗り放題乗車券を購入して、何年ぶりかの駿豆線に乗って終点の修善寺へ。修善寺駅は木の香りのするお洒落な駅舎で、Aqoursのスピンオフ的な存在である『幻日のヨハネ』の等身大パネルや、温泉むすめのパネルなどもあって美少女パネルに溢れていた。車両自体もAqoursとコラボしたラッピングカーがいくつかあるようで、沼津に限らず伊豆全体にAqoursが愛され根付いているのを感じた。

 

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 温泉むすめがあることから明らかなように、修善寺には修善寺温泉があるが、そこは後日に回してとりあえずは東海バスで南西方面へと向かった。長い間バスに揺られて、終点の松崎に着いた。

 松崎町伊豆半島のかなり先端の方にある町で、伊豆の地学的特徴から非常に豊富である温泉がある他に、海鼠壁の町並みが知られている。海鼠壁とは、主に黒い瓦の上に斜めに直交するように漆喰の塗られた壁で、豪商の建造物や城などの建築で見ることができるので、一度くらい見たことのある人も多かろう。最初にその町並みを散策して、それから逆走する形で他の場所に行くためにバスターミナルへと戻った。

 

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 次に向かったのは西伊豆町堂ヶ島である。堂ヶ島はトンボロがあることでも知られる美しい海岸沿いの景色が魅力である。トンボロとは、波によって運ばれた砂が障害物に溜まっていくことによって、近くの離島と陸続きになった地形のことである。堂ヶ島の場合は干潮時にのみ歩いていけるということであったが、あまり悠長にはしていられなかったので展望台から眺める程度で十分楽しめた。余談だが、堂ヶ島の洞窟などを巡る遊覧船は、強風のために運休となっていた。確かにかなり風が強かったので、これにも乗りたかったが致し方ないと思い断念した。

 

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 その後は昼食を取るために食堂の方へ。この辺りは『ゆるキャン△』の聖地になったので、あちこちにそのキャラクターの等身大パネルやらポスターやらフィギュアやらが飾られており、つくづく伊豆は人気アニメの舞台に選ばれていて羨ましい限りであった。

 

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 食堂では、伊豆名物のアジフライの定食を頼んだが、烏賊墨の焼きそばに豚トロを乗せた「三四郎島のとんぼろ」というゆるキャン△とのコラボメニューがあったのでそれも追加で注文した。普段は一日一食の日が多く昼食自体取らないことが多いような少食なので、食べ切れなかったらどうしようと不安であったが、ここは勢いよく頼んで結果的によかった。

 アジフライは、西伊豆が養殖マアジの日本一の出荷量を誇るらしく、サクサクした衣にぎっしり鯵の旨みが詰まった身で、伊豆の味覚を堪能することができた。この記事を書いている途中で、赤身・白身は身の色ではなくミオグロビン・ヘモグロビンの含有率で決まっていて、鯵などの身は見た目は白いが赤身に分類されることを知った。

 

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 そしてコラボメニューの焼きそばであるが、烏賊墨のまろやかな味わいが麺に練り込まれていてこれまた大変美味であった。西伊豆では烏賊墨焼きそばが海賊焼と呼ばれ、B級グルメとして人気が高いようで、ゆるキャン△の方がそれを参考にして作中で描いたと思われる。また、トンボロに掛けたと思われるトッピングの豚トロもジューシーで、非常に満足感の高いランチタイムとなった。

 

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 堂ヶ島を後にすると、次は黄金崎へ降り立った。ここには様々なガラス製の工芸品や芸術品を展示する黄金崎クリスタルパークと、そこから坂を上った先にある、起伏の激しいごつごつした岩肌とそこに打ち寄せる波の荒々しさを眺められる黄金崎公園がある。まずはクリスタルパークに展示されている作品を眺めて、それから公園の方へと向かった。

 

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 公園の先の崖には、馬ロックと呼ばれる奇岩を始めとして様々な形状の岩肌が波を受け止めていた。ジオパークに選ばれたのに相応しい壮大な景観であった。風が強かったので、砕けた波の飛沫が舞い上がって、数十mくらい上にあるはずの展望台付近まで舞い上がってくるほどであった。なかなかじっと目を開けて見ていられる状態でもなかったので、いくつかの展望台とそれらを繋ぐ通路を移動しながらその雄大なるを眺めていた。

 

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 やがて陽が傾き黄金崎を去ると、後はバスで修善寺まで行き、電車で沼津へと向かった。数年ぶりに降り立った沼津は、以前にもましてコラボしているような気がした。静岡県でも有数の立派な駅舎の真正面にAqoursのイラストが貼られていたのがその最たる例であろう。

 

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 アニメグッズ店の一つであるゲーマーズの出張所として、通称ヌーマーズと呼ばれる店舗があり、そこにも数年ぶりに訪れてみた。お団子の髪型がかわいらしいいわゆる厨二病キャラの津島善子(自称ヨハネ)が看板娘となっているこの店舗は、狭い店舗ではあるが、店内の半分以上をラブライブのグッズが占めているという事実上のラブライブグッズ売り場と化している。そこでせっかくなので何かグッズを買って行こうという誘惑に負け、Aqoursではないが別ブランドの虹ヶ咲の近江彼方のグッズを購入し、能登半島地震への募金をすることで貰えるカードも受け取った。能登ではないが、同じ県内の金沢がラブライブの最新ブランドである蓮ノ空の舞台であるということもあって、蓮ノ空を中心として能登の復興を応援しようという企画のようであった。私も能登にはまだ行けてなくて行きたかった場所がいくつもあるので、私のような貧乏人の微々たる募金でも塵が積もって少しでも早く復興することを願ってやまない。

 

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 駅の方へ戻ると、駅の隣にある建物に入居している回転寿司屋に入った。回転寿司とはいえども、私も通されたカウンターには全部板前から直接提供される形となっていたので、実質回らない寿司である。握りの盛り合わせに追加で少しだけ握りなどを注文し、地ビールを味わいながら寿司を頂いた。ネタはどれも肉厚で、全国チェーンの安い寿司屋とは全然違う本場の新鮮な魚の旨みが口の中に溢れ出した。地ビールはラガーではあるがエールにも近い風味があり、絶妙なバランスで成り立っていると思われる味わいだった。私は非常に満ち足りた気分になった。

 

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 宿泊地は三島のつもりであったので、東海道本線で三島へ戻り、少しだけ駿豆線に乗って南下した。途中で、サッポロビールが静岡限定で販売している静岡麦種を購入し、気分よく飲みながらネットカフェへと向かった。上々たる初日であった。

 

 翌日は、快活の近くにある清水町の柿田川公園を訪れるところから始まった。ここは富士山の雪解け水に由来する柿田川の湧水で知られ、街中でありながら、水底まで見えるような澄んだ水が公園の木々と合わせて優美な庭園のような風景を作り出していた。

 

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 そこからバスで一旦三島駅に行くと、みしまコロッケを買って、それを食べながらまた駿豆線で南下していく。最初に降りたのは伊豆長岡駅で、ここから伊豆箱根バスなら内浦地区へ行けることから駅全体がAqoursでラッピングされているが、今回は東海バスフリーきっぷ縛りなのでそちら側にはまた別の経路で行く。

 

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 この日伊豆長岡を訪れたのは、韮山反射炉に行くためであった。韮山反射炉は製鉄などを行う反射炉の一つで、世界文化遺産の「明治日本の産業革命遺産」の構成遺産にも含まれている歴史的に重要な遺構である。駅から2kmくらいの田舎道を歩くと、白い建造物が伸びているのが見えてきた。

 

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 現地には小さな博物館が併設されており、そこで料金を払うと、館内をぐるっと見て回ってから外の反射炉の間近に行けるという順路になっていた。館内の展示は19世紀の国際社会において、開国させられた日本が反射炉で作ってきた大砲に纏わるものが主であった。モルチール砲の展示もあった。

 

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 外に出ると、反射炉の実物の側まで行くことができて、鋳鉄の投入口を覗くこともできた。復元されたカノン砲や館内のものと近いモルチール砲も展示されており、韮山が軍事的に重要な場所であったことがわかる。近くには池に石が並べられた小さな庭園もあった。

 

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 反射炉を出てまた田舎道を引き返し駅に戻ると、また修善寺駅まで乗った。二日連続の修善寺である。しかし、今回はちゃんと修善寺を観光するために来た。

 修善寺の辺りでは、『伊豆の踊子』などで知られる天城で栽培されている山葵を使った山葵丼が名物のようで、駅の近くにもいくつか店舗があった。そのうちの一つに入ってみて、山葵丼を注文する。しばらくすると、白米には刻み海苔と鰹節だけが乗っており、山葵や漬物が小鉢に盛られたお盆が運ばれてきた。

 山葵はかなりの量があったが、このくらいの量が地元で食されている量なのかと思って全部を乗せ、醤油を回しかけて頂いた。さながら刺身のない海鮮丼のような見た目であった。私は唐辛子や芥子や山葵など、大抵の薬味や香辛料の辛さに強い方であるが、流石に山葵が多すぎて、つーんと鼻に来るのを久々に体験した。山葵も米も美味しかったが、流石に全部は入れずに少し控えめにした方がよかったかと思いつつ、もう混ぜてしまっていたのでそのまま完食した。山奥や寒冷地などに伝わる味の濃い刺激的な料理は、なかなか現地以外では食べられないので、貴重な経験であった。

 

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 昼食を終えると、少しだけバスに乗って修善寺温泉に向かった。伊豆には温泉が多く湧いているが、その中でも修善寺はそれなりの規模を誇り、しっかりと温泉街が築かれている様子であった。

 

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 到着して少し散策しているうちに公衆浴場が開店したので、まずは温泉に入ることにした。外湯でこぢんまりとしてはいたが、外観もよく温泉も源泉掛け流しのようで、冬の冷えた身体がほぐれるように温まった。

 

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 湯から上がると、温泉街の更に奥地へと散策に出かけることにした。川沿いに並ぶ風情のある旅館の町並みもいいが、竹林の小径が風光明媚で有名であろう。竹林の方へ歩いていくと、石畳の道の両端に竹が高く伸びていて、嵐山を思わせるような景色であった。道の真ん中あたりにある竹を組んでできた丸いベンチに座って、四方を竹に囲まれながらしばらくその静寂さに浸る。入浴後の温まった身体なら冷えることもなく、のんびりと散策をすることができた。

 

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 最後には温泉街の中に位置する修禅寺に参拝して、無料の足湯に浸かりながら次のバスを待った。バスの来る時間が近づくとバス停に戻り、一旦修善寺駅まで戻った後、前日と同じ松崎行のバスに乗り換えて、土肥温泉で下車した。

 

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 土肥温泉の方は温泉街というほどの町並みは形成されておらず、旅館が点在するばかりで外湯はかなり少なかった。その中の一つに向かうと、非常に簡素な建物で、入浴券の券売機が屋外にあるという初めて見る形式の浴場であった。こちらの温泉は加水されているものだったが、冬に温泉はいくつ入ってもいい。再び身体を温め熱を補給して、浴場を出た。

 

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 次に向かったのは土肥金山である。ここではかつて金が豊富に取れ、売店かつ食堂となっている玄関口の施設の向こうにはかなり広めの庭園が広がっており、その中に金山の坑内への入口があった。

 

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 坑内には解説や道具の展示などがあったり、奥の方には神社があったりもした。所々には等身大の人間の模型が仕事をしていたり休憩したりしている日常風景を再現した展示もあり、臨場感も伴った坑夫の営みを学ぶことができた。

 

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 帰り道の方には金に関する資料館もあり、中でも250kgの巨大金塊は世界一のものとしてギネスにも登録されているほどの名物のようだった。その金塊を中心に金が歴史的にどう扱われてきたかなどの展示を見て、最後に土産を少し見てから退館した。余談だが、ここにもゆるキャン△コラボグッズと温泉むすめのパネルがあった。昨今はアニメとのコラボや美少女キャラクターが客引きに一役買っている事例を伊豆では多く見かけた。

 

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 少しずつ陽が沈もうとし始めた頃、すぐ近くのスーパーで地ビールを購入して、松原公園まで歩いた。海岸沿いの公園で、松原と付くくらいだから松の木が多く生えているのであるが、この季節の土肥といえば桜である。土肥桜は国内最速の1月に満開を迎える桜なのである。園内の展望台から木の下から、色んな角度で桜を観察した後、ベンチに座って先程の地ビールを飲むことにした。なんと1月のうちに花見ができてしまったのである。途轍もなく早咲きの桜を眺めながら飲むビールは格別に美味しかった。

 

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 帰りのバスを待っている間に、すっかり陽が暮れて夕焼けから宵の口へと入ったので、ついでに夜桜まで楽しむことができ、満足してバスに乗った。

 

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 三島駅まで帰ってくると、前日に沼津で飲んだことと、流石に海鮮ばかりに飽きつつあったということがあって、今度は三島で飲むことにした。翌日沼津に行く日に三島で飲み、三島に行った日には沼津で飲むいう何とも非効率な旅程となってしまった。

 駅の近くの餃子が名物の居酒屋に入ると、小さな店舗ながら地元の人と思われる人々で賑わっていた。最近の私は典型的な観光地向けの飲食店にも行きはするものの、そうではないローカルな居酒屋にふらりとお邪魔するのも旅の醍醐味だと思っている。とはいえ一人客だしジョッキの数杯程度では酔いもしないので、常連客や店員と会話することなどないに等しいのであるが……。

 ともかく、その居酒屋には定番から風変わりなものまで様々な味の餃子があり、また他のおつまみメニューも揃っていた。私は一番の名物の餃子はもちろんとして、砂肝や酢もつ、ピクルスなども注文した。その中には言わずもがなお酒も入っていた。料理はどれも美味しく、その中でも梅肉が乗って紫蘇の敷かれた餃子や低温調理で殺菌されつつも生っぽい見た目も残した砂肝は非常によかった。酒も進んで、楽しい三島の夜を過ごすことができた。

 

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 三日目はいよいよ最初に言及して今回の旅の直接のきっかけともなった内浦の淡島へと行く日となった。どうやら主役は遅れてやってくるらしい。冗談はさておき、バスでネカフェから沼津駅に向かい、そこから乗り換えて沼津市街から南に向かった所にあるあわしまマリンパークへと向かった。

 

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 あわしまマリンパークは内浦地区北部の無人島である淡島に作られた、魚類や両生類などを展示している水族館である。淡島の各所がAqoursの聖地となっているが、この記事の執筆時点では水族館は閉館となり、聖地の一つであるホテルに宿泊する人だけが船で渡れる状況となっているようである。水族館側としては、施設の老朽化を原因とする閉館としており、営業再開を目指しているということなので、その日が訪れれば再訪したいと思う。

 さて、バス停に着くと、そこから少し歩いた所に乗船場がある。近くのチケット売場でチケットを購入して船に乗るという普通のシステムであるが、その売場の簡素な建物の内外にAqoursのポスターなどが所狭しと貼られており、外の屋根下のスピーカーからは常時Aqoursの楽曲が流れているという状態であった。更に淡島行の船に乗る時間になって船を見ると、それもまたAqoursのラッピングで覆われており、船内の壁には声優のサインが書かれているという徹底ぶりであった。

 

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 短い航路を経て船が淡島に着くと、細い桟橋を通って島へ上陸した。到着した頃にちょうどイルカショーが始まるようだったので、適当な席に座った。間もなくショーは開始され、イルカと飼育員で輪投げをしたり、高くジャンプしたりするなどの芸を見ることができた。

 

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 その後はメインであると思われる水族館の建物内を見て回った。小さな水族館ではあったが、手書きのポップがたくさんあったり、飼育員が大水槽の前で子供も楽しめるような解説をしていたりと、幅広い世代に愛されそうな工夫が凝らしてあって好感が持てた。

 

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 その北側には売店や、カメなどがいる屋外展示があった。売店前や店内には、水族館らしいグッズの他にもAqours等身大パネルやグッズなどが豊富に置いてあり、特に1月生まれの黒澤ダイヤに関しては祭壇とも呼ぶべきものが形成されていて誕生を祝福されていた。私はAqoursの中では桜内梨子が一番の推しなので、ここ限定の彼女のアクリルスタンドを購入した。

 いい感じに昼時になってきたので、ここで桟橋の先にあるレストランに入った。当然ここにもAqoursのポスターなどが大量に貼られている。また、コラボメニューとしてAqours丼なる海鮮丼があったので、それを注文することにした。

 快晴の空からの陽射しが強く、冬服では暑いくらいの席に座って調理の完成を待つ。窓際の座席で、桟橋側からイルカショーのプールや釣り堀のようなものが見えた。

 混み合っているのでそれなりに待った後、番号札で呼ばれてお盆をカウンターに取りに行って席に着いた。海鮮丼にはAqoursの人数と同じ9種の海産物が乗っているらしい。中でも真ん中に栄螺が殻ごと乗っているのは目を引く。また、海苔や醤油入れの小皿にはキャラクターが描かれていた。偶然にも小皿に私の好きな梨子がおり、海苔の方にも梨子や善子と一緒にGuilty Kissというユニットを組んでいる小原鞠莉がいて、運に恵まれた日であった。

 

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 肝心の丼であるが、定番の鮪やサーモンが美味しいのは言わずもがな、駿河湾の名物である桜海老しらすなども美味しく、ぼったくりのコラボメニューではなくしっかりと地魚をも活かしているのがわかって、伊豆と駿河の海の幸を頬張った。

 食後にはペンギンの展示を見たり、南側にあるカエル館にて両生類を観察したりした。カラフルな肌色をしたカエルがかなりの数展示されていた。カエルをこれほどの種類展示している施設は全国でも珍しいのだという。

 

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 カエル館を出てまた南側に向かうと、今度はタイミングよくアシカショーが行われるようだったので、それを見物していくことにした。アシカもまたイルカと同じように輪投げの輪を顔から潜って首に通していくのだが、イルカと違うところとしてアシカは鰭で陸上を移動できるので、陸上でそれを実演してくれた。一方で水中を動くことにも長けているので、水面から高い位置にある球体にタッチするなどイルカと同じような芸当もできて、海で暮らす哺乳類という我々に似ているようで違うような動物の能力をよく観察できた。

 

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 その更に北側には聖地の一つであるリゾートホテルや、イルミネーションが催されている洞窟があり、その洞窟を潜った反対側にも埠頭らしきものはあったが、観光用の遊覧船などが出入りする場所ではなさそうな感じであった。そこから島を一周歩いて回ったり、山を登った上の神社に行くこともできたりするようであったが、もう夕方に近い時間になっており、流石に時間がなかったので大人しく退散して帰りの船に乗ることになった。いつかリニューアルして営業再開した時にはそちら側にも訪れたいと思いつつ、水族館自体を堪能することはできたので、後悔することなくAqoursラッピング船で本州側に戻っていった。

 

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 帰りのバスを待っている間、その日の営業を終了したチケット売場のある簡素な小屋の中にあるAqoursのグッズやポスターの展示を眺めていると、屋根下のスピーカーからこの時間にもなってまだAqoursの楽曲が流れ続けていることに気づき、スピーカーの近くの自販機には沼津産茶葉を使用していてAqoursのラッピンプが施された「ぬまっちゃ」という缶のお茶が大量に売られてあった。存在は前々から把握していたが、この機に初めて買ってみようと思い、緑茶と焙茶のどちらか迷った末に緑茶の缶を購入した。静岡といえば日本一の茶畑とされる牧之原について以前の記事で触れたが、東部の沼津の緑茶も味わい深く、この旅の間に購入した梨子や彼方のグッズを並べて記念撮影をしたりしていた。

 

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 そうして暇潰しをしているうちに、沼津駅行のバスが到着したので、ぬまっちゃの缶は土産話に使おうと持って帰りつつ、JR沼津駅まで戻ってきた。暮れ泥む夕陽が沼津駅を照らしているのが、何だか儚げにすら思われた。

 

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 沼津から小田原までのきっぷを、会社跨ぎのせいでまた紙で購入し、境界駅の熱海で乗り換えて小田原駅に着いた。小田急の改札を潜ると、当駅始発の新宿行の急行が待機していた。伊豆の景色とラブライブの思い出を大切に抱えながら乗った急行列車の扉がやがて閉じ、ゆっくりと動き始めた。進行方向と逆向きに発生する慣性力が私を伊豆に引き止めようとしている気がした。