潮騒、某、暮れ泥み

小説のような旅行記を。鉄道旅を主として全国を旅しています。

北海道旅行 1

 まだ雪の残る春の北海道に行ってきた。今回からはそのことについて記そうと思う。

 

 東京を朝早くに出発し、仙台までは真っ直ぐ電車に乗り続けた。宇都宮あたりで通勤ラッシュと重なり、寝不足の中立たされてつらかったことを覚えている。その後は眠り続けて、気がつけば仙台であった。

 仙台には友人がいたので、彼女らと会っていた。詳細はプライバシーの観点から割愛しようと思う。一緒に仙台を観光したりして楽しい時間を過ごすことができた。

 酔い潰れて一日無駄にした後、再び旅立った。盛岡まで着いた後、山田線に乗って宮古へ。そこから三陸鉄道に乗った。三陸鉄道から見る海は本当に綺麗なものであった。

 

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 久慈に着くと、八戸線に乗り換え。八戸線に乗った頃には夜になっていて、再び綺麗な海を拝むことは叶わなくなっていた。もっとも、三陸鉄道でそれは十分堪能できたわけだが。そして本八戸に着いた。

 ここから八戸苫小牧フェリーに乗るわけだが、バスがいかんせんわかりにくい。何度も路線図を確認したが、フェリーターミナルに直接行く路線がないので、その近くの何もないところで降りる羽目になった。バスに乗っていると、フェリー利用者はここで降りろとのことだったので、やはりこれが限界らしかった。

 そこからしばらく歩いて、何とかかんとかフェリーターミナルに到着した。途中の道には全然人がいなかったのに、どこから湧いたのか乗り場には意外と人がいる。きっと車か何かで来たのであろう。

 

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 そしていよいよフェリーに乗り込む時が来た。運賃は高いが、距離を考えると妥当なのだろう。屋外を見渡せるお風呂までついており豪華な船であった。しかし、深夜なので何かが見えるわけではないのだが。

 お風呂から上がると、すぐ眠りについた。翌朝辿り着く北海道を夢見て……。

 

 苫小牧は雪化粧をしていた。雪に馴染みのないところで育った私は、雪を見るだけでテンションが上がった。これ以降、うんざりするほど雪や路面凍結を見ることになるのだが、この時点ではそんなことまで考えが及ぶはずもない。何しろ雪景色なのだから。

 

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 慣れない雪に足を滑らせそうになりながら苫小牧駅に着いた。今回の旅の本当の始まりの地である。何しろ今回の主役は北海道なのだから。それまでの間はいわば前菜のようなものである。ここから本当の旅が始まるのだと胸を高鳴らせた。

 苫小牧駅で北海道フリーパスを購入した。北海道フリーパスはJR北海道内の特急を含む在来線が乗り放題になる切符である。特急に乗れるだけあって、高い。ここは北東パスとかなり悩んだが、7日間という旅程の制限の中で行きたいところを行き切るには特急を使わないと不可能だと知ったので、仕方なく高い切符を買ったのである。財政難のJR北海道へのお布施のようなものだと思った。

 最初に向かったのは帯広。今回の旅は道東と道北がメインである。札幌・小樽・旭川・函館は以前に行っているので、全部スルーした。いわば未回収の北海道を埋める旅であった。

 

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 車窓から見える景色はずっとこんな調子であった。これではとても道東に大きな都市があるとは思えないが……と思いかけたが、その予想は覆されることになる。

 

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 帯広は意外に栄えていた。こう言うと失礼かもしれないが、道東も意外に栄えているのだなあと感動した覚えがある。帯広を適度に歩き回った後、名物という豚丼をいただいた。

 

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 その後、フォロワーの薦めでスイートポテトを購入した。想像以上に大きく、その中で小さめのサイズをいただいた。これもまたたいへん美味しかった。

 

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 見ての通り電車に乗り込んで、釧路を目指した。釧路に着くと、これまた栄えていた。道央だけでなく、道東も活気があるものだと思わされた。

 

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 釧路も適度に歩き回って、その後海鮮居酒屋のようなところで夕食を食べた。その後は東釧路に向かい、いつものようにネカフェを目指して歩き始めた。雪道には少しずつ慣れ始めていた。

 

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 5日目の朝。残雪を踏みながら東釧路駅を目指す。東釧路駅は無人駅である。本当に列車が来るのか不安に駆られたが、それは時刻通りに到着した。根室行である。

 

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 今回の旅の主な目的は、日本の東端と北端に辿り着くことであった。根室北方領土を除けば日本の東端である。私は納沙布岬を目指して雪原の中を揺られていった。この日は途中から雪が降り出した。

 

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 根室に着いてまず感じたことは、その強烈な寒さである。この日は風が強く、それが寒さを加速させた。しばらく駅舎から出られないほどであった。何せ私は寒さに弱いのである。

 やっとのことで一歩踏み出し、コンビニでネックウォーマーを購入した。それで寒さはかなり凌げたので、回転寿司に入った。根室の新鮮な寿司をたくさんいただけた。とりわけ蟹は絶品であった。

 

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 途中でロシア語の標識も見かけた。流石根室である。ロシア語の標識は稚内にもあるが。ロシアとの領土問題を抱えていることを身近に感じられる瞬間であった。

 

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 ところで、根室駅周辺の寒さ如きで根を上げている場合ではなかった。私はこれから納沙布岬に行くのである。そこは極寒の地であった。

 根室駅に戻ってきてバスの切符を買って、お土産を見たりしていると、バスが到着した。それに揺られて30分以上、東へ東へと向かい、終点の納沙布岬に辿り着いて、あまりの寒さに顔が痛んだ。

 

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 何しろ岬は風が強い。元々の気温の低さに加え、あまりに強風が吹くものだから、体感温度は−20℃くらいにはなっていたのではなかろうかと思う。とにかく耳が痛かった。それでも岬を写真に収めることは忘れなかったが、寒すぎて途中からは資料館に籠り切りになっていた。

 

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 資料館には北方領土にまつわる展示や、北方領土返還に関する署名などが置いてあった。暇潰しに私も署名してみた。毎年国に提出されているのだという。望遠鏡からは北方領土も見ることができた。根室にはとかく北方領土返還の掲示が多い。あちこちにあるその掲示から熱量が伝わってくる。中には全千島・樺太の返還を主張する強気な碑まであって思わず笑ってしまった。ただしここでは政治の問題には深く踏み込まないことにする。

 

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 雪深い地面を踏みしめて何とかバス停に戻ってくると、帰りのバスに乗り込んだ。バスの暖房が暖かかった。北海道はまだ冬なのだ。冬に納沙布岬なんか行くものじゃないと思ったが、同時に貴重な経験ができたとも感じた。

 この日も再び東釧路に帰って、ネカフェに宿泊した。これで旅の目的は一つ達成された。次の日からは北を目指す。釧網本線の時刻表を調べながら眠りについた……。

 

 続く。