潮騒、某、暮れ泥み

小説のような旅行記を。鉄道旅を主として全国を旅しています。

淡路島旅行

 三宮駅でどっと乗客が降りていく。その波に乗って三宮バスターミナルに向かった。ミント神戸1Fにあるチケット売り場で北淡路バス乗り放題きっぷ高速バス大磯号版を購入する。これでまずは淡路市内を回るのだ。

 高速バス大磯号が4番乗り場に到着する。切符を見せて乗り込むと、乗客はさほどいなかった。空いている車内で悠々と寝ているといつの間にか明石海峡大橋を渡っていたらしい。私は淡路夢舞台で下車した。

 

 

 最初の目的地は国営明石海峡公園である。ここは広大な公園で、様々な花々が咲き誇っている。きっと季節によって色々な顔を見せるのだろう。ホームページでは一週間ごとに見頃の花が紹介されていた。

 

 

 東浦口から入園し、日傘を差して公園内をのんびり歩いていく。時折ベンチに座って水分補給も忘れない。園内は大きな池や川、それに木々も生い茂っており、丁寧に手入れされていることがわかった。子供向けの遊具も豊富だった。また、公園は海に面しているので、大阪湾を臨むこともできた。

 

 

 

 

 公園を後にしてバス停に戻ってくると、あわ神あわ姫バスに乗り込む。淡路市と言っても広い。1時間半かけて伊弉諾神を目指す。

 伊弉諾神宮は淡路一宮であるだけでなく、国生みの地である淡路島において国を作ったイザナギイザナミ夫婦の祀られる歴史ある神社だ。国生みの地として淡路島自体も日本遺産に指定されている。そんな格式高い神社の大鳥居を潜って参道を歩いていくと、立派な拝殿が現れる。

 

 

 

 まずは拝殿で参拝。その後、周囲の散策を始める。境内は広く、摂末社も多く存在する。とりわけ夫婦にまつわる神社はそれなりの規模があり、樹齢900年ほどという夫婦大楠が屹立している。

 

 

 境内を一通り見終わると、次のバスが来るまでしばらく一休み。ベンチに腰掛けてバスの時間を待った。バスは予定より1分早く発車した。乗り遅れなかったからよかったものの、これには流石に驚いた。

 そしてまた1時間半ほどかけて、次は東浦バスターミナルで降りる。帰りはここから高速バスに乗るのだ。途中、車窓から綺麗な海が見えた。行きは寝過ごして見られなかったので、帰路で初めて見ることができたのだった。

 

 

 東浦バスターミナルは小さいが、近くに道の駅があり、土産物も充実していた。それを買うでもなく眺めていると、そろそろ高速バスが着く時間となった。バスターミナルに戻り、新神戸行の高速バスに乗り込む。

 そして明石海峡大橋を再び渡り、三宮バスターミナルへ到着する。これにて淡路市内の観光は終わりである。しかし、淡路島の魅力はこれだけではない。後日、もう一度淡路島に上陸することになる。二度目の上陸の計画を考えながら淡路島旅行前編は幕を閉じた。

 

 淡路島に上陸する方法は、自家用車や高速バスなどで明石海峡大橋大鳴門橋を渡る方法、明石港から高速船で上陸する方法の他に、もう一つある。それが深日洲本ライナーである。深日〜洲本の航路は一度廃止されたが、最近は土日祝に限って復活しているのだ。ただし、まだ社会実験中の段階らしい。次はこれで洲本市を目指す。淡路島旅行後編の始まりだ。

 

 

 南海に乗ってみさき公園駅で乗り換え、多奈川線へ。深日港駅に着くと、フェリーターミナルはすぐ近くにあった。

 チケット売り場で乗船券を買う。学割が効いて、2割引の片道1200円。そしてすでに停泊している船に乗り込む。船内は些かレトロな雰囲気で、淡路島や泉州の観光案内のパンフレットが並んでいた。乗客はさほど多くなかった。まだまだ知名度の低い航路だと思うが、応援したい。

 

 

 船は定刻通りに発進し、きっちり定刻通りに洲本に着いた。洲本のフェリーターミナルの方が大きく、城下町を意識したと思われる風情のある建物だった。ボートピアも併設されている。そちらは賑わっているようだった。

 

 

 船を降りると、洲本城跡を目指す。洲本城は山城で、三熊山の頂上約130mに位置する。大浜公園の横を通って登山道に入ると、虫の鳴き声しか聞こえなくなり、ひたすらしんどい坂道が続いた。

 

 

 運動不足で体力がないので所々で休憩しながら必死で登っていると、やがて武者溜に着く。そこで初めて視界が開けて洲本市街と大阪湾を臨むことができた。汗で貼り付いたTシャツに微かに風が当たる。本丸までは後少しだ。

 更に奥に進み階段を上っていくと、いよいよ本丸に到着した。その頃には完全に息が上がっていた。天守は1階部分が中空になっており、ベンチが設置されている独特の構造だ。天守台に上って下から覗き込むと、天守の内部が少しだけ見えた。立ち入ることはできない。内部はどのくらい再現されているのであろうか。

 

 

 

 城を見終わると、次は洲本温泉に向かった。温泉街のようなものが形成されているわけではなく、ぽつぽつと温泉旅館や銭湯があるようだった。安い日帰り銭湯を目指して山を下り始める。下りは下りでそれなりにしんどかった。

 山を下りて平地に戻ると後は楽だ。汗だくになった身体をタオルで拭きながら銭湯を目指す。住宅街を進んでいくと、その一角にレトロな銭湯があった。中に入って入浴料を払い、汗まみれの服を脱ぎ捨てる。

 

 

 温泉は狭かったが、人はそれなりにいて密度が高かった。身体を洗って湯船に浸かる。登山で疲れた身体が癒されていく。

 風呂から上がって身体を拭いていると、帰りの船の時刻が近づいていることに気づいた。乾き切らない身体を無視して着替えを終え、番台に礼を言って銭湯を出た。そして真っ直ぐフェリーターミナルへと向かった。

 帰りの便は最終便だった。これを逃すと、高速バスで帰ることになる。今回はこの船に乗りたくて来たのだからそれは避けたかった。船の出港には無事間に合い、行きより更に乗客の少ない船内の座席に座る。

 これで淡路市洲本市を観光することができた。きっと南あわじ市にもいい所があると思うが、本州側から行きにくいために行けなかったのは残念だ。いつか機会があったら訪れてみたい。淡路島をもっと知りたいと思った。

 深日港に着く頃には、辺りは真っ暗になっていた。深日洲本ライナーの旅に終わりを告げ、多奈川線に乗る。みさき公園駅に着くと、しばらくして特急サザンがやってきた。